地域における大学の存在感
郊外の住宅街にキャンパスを置き、「学芸の森」と呼ばれるほど緑豊かな環境を持つ東京学芸大学。そんな大学の敷地内に、地域に開かれたカフェが誕生しました。
オープンから遡ること数年。当時の副学長兼図書館長である藤井健志先生は、多摩信用金庫が発行する地域情報誌「たまら・び」の編集会議に参加しました。そこで上がった「東京学芸大学は地域の中で存在感が小さい」という地域住民の何気ない一言が、ずっと心に刺さったままでいました。
教育、研究と並んで、地域連携の役割が求められている大学。東京学芸大学による地域連携はどのようなカタチなのだろうか。そんな思案をめぐらせている時、耐震改修でリニューアルを進めていた附属図書館の1階に、教職員と学生の福利厚生を目的としたスペースを設けることになりました。そのスペースを活用して、地域住民にも開かれたカフェができないだろうかというアイデアが生まれます。
地域情報誌がつないだ地元企業と大学
現在、notecafeを運営するのは、小金井で公共の創業支援施設運営をはじめ、地域活性に取り組んでいる株式会社タウンキッチン。同じく、「たまら・び」の編集会議に参加していました。
地域に根ざした事業を行う中で、大学と地域との連携が限定的であることに問題意識を持っていました。そんな折、藤井先生から地域連携のカフェについて相談があり、立ち上げに向けた作戦会議がはじまります。
「気付く」という意味を持つnote
地域の人が気軽にキャンパスに入り大学の知を学べる玄関口としての役割と、逆に大学の人が地域のことを知るきっかけとなる役割。その両面を実現するために、議論を重ねる中で「気付く」という意味を持つ「note」がコンセプトの柱になりました。
コンセプトが固まった後は、店内には様々な「気付き」の仕掛けを計画します。その象徴が、壁一面に設置された大学周辺の地図「note map」。横4m×縦2mの大きなホワイトボードに印刷された地図は、地域のおすすめスポットやイベント情報を書き込めるインフォメーションボードとして、オープン以来カフェ利用者たちに多くの気付きを与えています。
note cafeの船出
晴天に恵まれた2015年6月6日。notecafeはオープンの日を迎えます。大学の教職員をはじめ、地域のデザイナー、地元大学生、金融機関など、多くの協力をいただきながら、notecafeは船出しました。
オープン後は、学生も教職員も地域の人も参加できる講座やイベントを企画。大学の教育研究成果を地域の人が知ることで、地域の課題解決の一助にしていく。あるいは、地域の魅力について学び考えるイベントを通して、地方出身の学生たちが小金井のまちに興味を持つ。図書館の中にあるカフェで、そんな交流が一つひとつ重なり、地域と大学の垣根を超えた連携が始まろうとしています。