「大学の知を地域に開く」ために、カフェができること
「大学の知をもっと地域に開いていきたい。」そんな思いから2015年6月にnotecafeはオープンし、子ども連れのお母さんをはじめ、地域の人が日常的にキャンパス内でカフェを楽しむという風景ができてきました。しかし、大学の最大の資源である学生や教員といった「人」を活かし、その「知」を地域に開けていくためにはどうすればいいのか。元副学長でnotecafeの発起人である東京学芸大学教授藤井健志先生の強い思いが、「まちのカルチャーカフェ」のはじまりでした。
街の文化×大学の知
東京学芸大学は教育に特化した大学です。しかし、スポーツ、音楽、宗教、地理など、それぞれの教員が持つ専門知識は総合大学のよう。そんな多岐にわたる知の財産を地域に還元していくには、どのような形がよいのか。地域で活躍する金融機関や行政機関、デザイナーや民間企業などのプレーヤーが何度も大学に集まり、話し合いを重ねました。
その中で浮かび上がった言葉は「街の文化」。学生や教員の多様な知を地域に還元していくことは、街の文化の形成につながっていく。そんなきっかけを、カフェのようなゆったりしたスタイルで学べる場にしていこうという方向性が固まります。
また、教員の話を一方的に聴く講座スタイルではなく、大学と地域との重なりの中から新しい化学反応を起こしていくために、教員や地域の人が2人1組となり、語り合うというスタイルに決まります。
第1回は「宗教とデザイン」
notecafeがオープンして1年を迎えた2016年6月。藤井先生が理事を務めるNPO法人東京学芸大こども未来研究所が運営主体となり、「まちのカルチャーカフェ」の第1回が開催されました。テーマは「宗教とデザイン」。多摩地域を中心に活躍されているデザインディレクターの萩原修さんと藤井先生の2人がゲストです。参加者は集まるのかという関係者の不安をよそに、当日は定員を大幅に超える応募があり、カフェの椅子が足りなくなる超満員。学生や教職員だけでなく、地域からもたくさんの方々がカフェに集まり、大成功に終わりました。
イベントから日常へ
その後も月1回、様々なテーマを設けて開催されています。参加者も毎回異なり、このイベントで初めてキャンパス内に入ったという声も度々聞かれます。
まちのカルチャーカフェを通じて、大学と地域が交わる風景ができてきました。さらに、藤井先生はこれからが大事だと話されます。「イベントにはたくさんの方が来られ、この場に集まった多様な方々による大学と地域との交流が生まれつつあります。しかし、このイベントはあくまできっかけ。イベントがない日常に、この風景を根付かせていくのがこれからの課題です」
はじまったばかりの「まちのカルチャーカフェ」。そこでの出会いや学びがひとつの契機となり、大学と地域の新しい関係性が広がりつつあります。